2025.08.05
機械式駐車場とは、専用の台に載せた車を機械で移動させ、縦に積み重ねて収容する駐車場です。都市部のマンションなどで多く導入されているタイプですが、近年は空き車室が増加傾向にあり、その維持管理が課題となっています。今回は、空き車室が多くなってしまった機械式駐車場を有効に活用していくためのアイデアを7つご紹介します。
機械式駐車場に増える「空き車室」の悩み
はじめに、近年機械式駐車場に空き車室が増加している背景と、空き車室問題への対応が求められる理由についてご紹介します。
空き車室が増加している背景
空き車室が増加している要因の一つは、車の大型化と機械式駐車場の規格のミスマッチです。古いタイプの機械式駐車場は、車高1,550mm以下のロールーフ車仕様で設計されています。近年普及が進むミニバンやSUVは、機械式駐車場の高さ制限をオーバーすることが多く、せっかく駐車場があっても車が入らないという問題が発生しています。入出庫がスムーズで使い勝手の良い周辺の平置き駐車場と競合する遠因にもなります。
もう一つの要因が、住民の車離れです。機械式駐車場は、土地スペースが限られている都市部を中心に普及していますが、都市部ほど車の保有率が低いのも実情です。自動車検査登録情報協会の調査によると、世帯当たりの保有台数が低い都府県の上位は東京、大阪、神奈川で、大都市圏を抱えるエリアほど車を持たない人が多いことがうかがえます。
また、日本自動車工業会の調査では、車を保有している人の減車意向が増車意向を上回っており、車を持たない若年層の購入意向も減少しているという結果が示されました。経済的な負担への懸念や、公共交通機関で十分という声もあり、機械式駐車場の設置当初とは、カーライフが大きく変化していることも影響しています。
「空き車室」対策が必要な理由
空き車室の増加は、駐車場の維持管理を続けていくうえでの大きな懸念点です。機械式駐車場は、使っていなくてもコストがかかるものです。例えば、装置の定期的な点検や整備、部品の交換、老朽化に伴う大規模修繕など、ほかの駐車場と比べても維持管理費用が高いことが指摘されています。設備更新を行うための費用は、1台分の駐車スペースに対し100万円程度かかるとも言われています。
収益の減少で適切な管理ができないと、老朽化が進み事故や破損のリスクも上昇します。「管理が行き届いていない」という印象は、物件そのものの価値低下につながりかねません。このような事態に陥る前に、物件の現状に応じた空き車室対策を行いましょう。
空きスペース活用アイデア7選
マンションをはじめとする月極駐車場の場合、安定的に収益を確保するためには稼働率を80%以上にすることが理想です。空き車室が目立つ場合は、駐車区画を縮小したうえで、残りのスペースを別の用途で活用することが望ましいです。ここからは、駐車場の空きスペースを活用する7つのアイデアをご紹介します。
① バイクスタンドを設置して「バイク置き場」に転用
一つ目のアイデアは、機械式駐車場の空きスペースにバイクスタンドを設置し、バイク専用駐輪場に転用する方法です。バイク通勤・通学のニーズは根強い一方で、マンションなどの駐輪場には大型バイクが停められない場合もあります。屋内や屋根付きの機械式駐車場であれば、大切なバイクを雨風から守れるほか、盗難防止にも一定の効果が期待できるため、ある程度の需要が見込めます。テクノパークでは、機械式駐車場へのバイクスタンドの設置工事も承っております。
➁ 倉庫を設置して「レンタル収納スペース」に
空きスペースに倉庫を設置し、レンタル収納スペースとして貸し出す方法です。特にマンションの場合、部屋の収納が足りない、カー用品やアウトドア用品などの大きな荷物を置く場所が欲しいというニーズも多い傾向にあります。住民にとっても、自宅から近い場所に荷物を保管できる利便性の高さがメリットです。テクノパークでは機械式駐車場へのユニット式倉庫の設置工事も承っております。
▲ レンタル収納スペース
③一部の車室を減らして「ハイルーフ車対応」に改修
ハイルーフ車の人気が高まっていることを受け、一部の車室をハイルーフ車仕様に改修する方法があります。機械式駐車場の一部を撤去・改修してスペースを広げることも可能です。
ハイルーフ車の所有者からの利用希望が一定数ある場合や、なるべく改修費用を抑えて稼働率を上げたい場合におすすめです。
④機械式設備を解体して「平面駐車場」に再構成
機械式装置そのものを解体・撤去して平面式駐車場にリニューアルするケースも増加しています。装置の点検や修理にかかる維持費が削減できるほか、利用者も入出庫が楽になります。平面化することで、駐車場用途だけでないよりフレキシブルなスペース活用が期待できます。
⑤全面リニューアルで「EV・ハイルーフ対応」へ
全体的に設備の老朽化が進んでいる場合は、全面リニューアルを検討してもよいでしょう。 EV向けの充電設備を併設する、ハイルーフ仕様にするなど、近年の車のトレンドにマッチした設備に刷新することで、稼働率の上昇が見込めます。初期投資は大きくなりますが、ファミリー層の入居が多いなど、駐車場利用のニーズが高い場合に向いています。
⑦その他の活用アイデアも状況に応じて検討
他にも、アイデア次第で空きスペースは多様な使い方ができます。
・自転車専用駐輪場の拡大
自転車の駐輪場が不足しているようであれば、空きスペースを自転車専用の駐輪場に作り替えてもよいでしょう。
・宅配ボックスの設置
住民が不在でも荷物を受け取れる宅配ボックスの需要は急速に高まっています。戸数や設置場所に応じてサイズや性能を選びましょう。
・防災備蓄倉庫の設置
災害対策の強化という点では、一部の倉庫を防災用品や備蓄品の保管庫として活用することもおすすめです。
活用を検討する際の注意点
活用方法を決める際は、以下のようなポイントに注意が必要です。
【各種法令の確認】
駐車場法および地方自治体の条例によって、一定規模以上の建物には、延べ床面積や戸数に応じた数の駐車場を確保する定め(駐車場附置義務制度)があります。この制度は、駐車場を新設するときだけでなく、既存の機械式駐車場を改修する場合にも適用されます。駐車場を大幅に減らすと、条例違反となる可能性があるため、事前に自治体に確認することが大切です。また、機械式駐車場の装置の高さや駐車台数によっては、建築基準法や消防法が適用される場合がありますので、こちらもあらかじめ確認しておきましょう。
【改修の難易度やコスト、ニーズ】
機械式駐車場のリニューアルにあたっては、装置の老朽化状態を見極めたうえで、撤去・改修の難易度、必要コストについて慎重な検討が必要です。マンションや施設によって利用状況やニーズは大きく異なります。住民や駐車場の利用者にアンケートを取り、要望や意見を勘案しつつ改修計画を立てましょう。専門家のアドバイスを受けることもおすすめです。
【外部貸し出しが課税対象となるケース】
シェアリングスペースの設置など、住民や所有者以外の第三者にスペースを貸し出す行為は、収益事業に該当する可能性があります。法人税などの課税対象となる場合があるため注意が必要です。
まとめ:空き車室を「負債」から「資産」に変えるチャンス
機械式駐車場の空き車室は、放っておくと維持コストだけがかさんでしまう”負債”になりがちです。しかし、現状とニーズを踏まえたリニューアルを行うことで、価値ある”資産”として生まれ変わらせることができます。十分な検討を重ね、持続的な運営と利用者の利便性向上を実現する活用方法を選び取りましょう。